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乱用薬物の基礎知識

薬物乱用とは

薬物乱用とは、ルールや法律から外れた 目的や方法で使用することをいいます。
覚醒剤や麻薬などは1回使用しただけでも乱用にあたります。

1.薬物五法

麻薬及び向精神薬取締法」「大麻取締法」「あへん法」「覚醒剤取締法」「麻薬特例法」により禁止された違法薬物の使用(輸出入・製造・譲渡・所持を含む)

2.医薬品の不適正な使用

(処方箋に従わない用法・用量・回数及び過剰摂取:Overdose)

厚生労働省 薬物乱用防止パンフレットより

乱用されている薬物

世界で出回っている主な乱用薬物類

No 略号 名 称 等 代表的な処方薬
1 AMP アンフェタミン 覚醒剤 ビバンセ
2 M-AMP メタンフェタミン 覚醒剤 ヒロポン/フェノバール
3 OPI オピエート:ケシ・アヘン類 モルヒネ
4 COC コカイン 局所麻酔薬コカイン塩酸塩
5 PCP  フェンサイクリジン 幻覚剤「エンジェル・ダスト」 解離性麻酔薬 ケタラール・ケタミン
6 THC 大麻・マリファナ/ハッシシ  
7 BAR バルビツレート 向精神薬 フェノバール
8 BUP ブプレノルフィン 麻薬性鎮痛剤 レペタン
9 BZO ベンゾジアゼピン 抗不安薬・鎮痛剤 デパス
10 MDMA 幻覚剤「エクスタシー」  
11 MTD メサドン 合成オピオイド「癌性疼痛治療薬」 メサペイン 
12 OXY オキシコドン オピオイド「疼痛治療薬」 オキシコンチン
13 TCA 三環系抗うつ薬 アナフラニール
14 LSD 合成麻薬 幻覚剤  
15 ZOL ゾルピデム 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬 マイスリー
16 K2 スパイス 合成大麻:脱法ハーブ  
17 FEN フェンタニル 癌性疼痛治療薬 フェンタニルテープ
  • ※1 上記 1~6はDOT(米国運輸省)規定の商用車運転手に対する検査項目。
  • ※2 6.10.14.16.を除く13種の薬物は、医師の処方により使用される。
  • ※3 6.は、医療用として外国では使用が許されている。

乱用薬物の作用と特徴

〇:低    ◎:中    ●:高    -:無    NA:情報なし
薬物 作用※1 耐性※2 精神依存※3 身体依存※3 離脱症状※4 フラッシュバック※5
覚醒剤 興奮 -
大麻(マリファナ) 抑制・幻覚 - - -
LSD 幻覚・興奮 - -
ヘロイン 抑制 -
コカイン 興奮 -
MDMA(エクスタシー) 興奮/脱抑制 NA -
危険ドラッグ 幻覚/興奮/抑制 NA NA NA NA -
睡眠薬・抗不安薬 抑制・催眠 -
アルコール 抑制・催眠 -
ニコチン 興奮・抑制 - -
シンナーなど 抑制・幻覚 NA NA -

上記はメーカー提供情報 参考資料です。

  • ※1 興奮:(アッパー系)精神的にハイな状態になる(脳の報酬系に作用し活動的になる)
    抑制:(ダウナー系)安らぎ・幸福感が得られる
    幻覚:(サイケデリック系)幻覚・妄想が現れる
    催眠:(眠くなる)
  • ※2 薬物使用を続けると、薬に体が慣れてくるため徐々に多くの薬物を欲するようになる
  • ※3 薬物を止めようと決意しても精神的、肉体的に支配され薬を止められない依存症状
  • ※4 薬を止めると起こる強い身体的苦痛を伴う症状
  • ※5 薬物の継続的な摂取を中断した後、心理的なストレス、睡眠不足、飲酒、他の薬物の乱用等をきっかけとして、突然、慢性中毒と同様の症状が現れることをいう。

乱用される薬物の詳細

覚醒剤(隠語:シャブ、S、スピード、ヤーバー、クリスタルなど)

覚醒剤は、AmphetamineとMethamphetamineの2種類があり、主にシャブと呼ばれるものはMethamphetamine。

白色の粉末や無色透明の結晶で、無臭でやや苦みがあります。「ヤーバー」と呼ばれる錠剤型の覚醒剤もあります。
覚醒剤には、神経を興奮させる作用があり、乱用すると眠気や疲労感が無くなり、頭が冴えたような感じになります。しかし、効果は数時間で、その後は激しい脱力感、疲労感、倦怠感に襲われます。
覚醒剤は、特に依存性が強く、乱用を続けると、「覚醒剤精神病」の状態になり、幻覚や妄想が現れるほか、時には錯乱状態になって他人を暴行したり、殺害したりすることがあり、乱用を止めても長期間にわたって症状が残る危険性があります。
また、大量の覚醒剤を摂取すると、急性中毒により、全身けいれんを起こし、死亡することもあります。

大麻(隠語:マリファナ、ガンジャ、葉っぱ、チョコ、草など)

大麻の乱用方法は、吸煙が一般的であり、その他に食べ物に混ぜて食べる、飲む等の経口摂取があります。

大麻を乱用すると、知覚の変化がおき、音感等の五感が異常に冴え渡るという作用を感じますが、その一方で時間や空間の感覚がゆがみ、恐慌状態(いわゆるパニック)を起こしたりします。
また乱用を続けると学習能力の低下、記憶障害、運動失調(瞬時の反応が遅れる)、何もやる気がしない状態(無動機症候群)等の精神障害を起こします。

大麻は、覚醒剤等の他の違法薬物に比べると激しい身体症状が出にくいので、自分でも気付かないうちに大麻依存症になっていきます。
そして、更に強い刺激を求めて、他の違法薬物に手を出す例が多いことから大麻は、「ゲートウェイドラッグ」と言われています。

コカイン(隠語:C、コーク、ホワイト、スノウなど)

コカインは、南米原産のコカの葉を原料とした薬物で、無色の結晶又は白色の結晶性粉末で、無臭で苦みがあり麻薬として規制されています。
コカインには、覚醒剤と同様に神経を興奮させる作用があるため、体が軽く感じられ、腕力、知力がついてるという錯覚が起こります。しかし、覚醒剤に比べて、その効果の持続時間は短いため、一日に何度も乱用するようになります。
乱用を続けると、幻覚などの精神障害が現れることもあります。
コカインを大量に摂取すると、呼吸困難により死亡することがあります。

ヘロイン(あへん)

ヘロインは、けしを原料とした薬物で麻薬として規制されています。
純粋なヘロインは白色粉末ですが、純度の低いものには灰色や灰褐色のものもあり、粉末のほかに棒状、板状、粒状など様々な形状のものがあります。
一般的には無臭ですが、中には酢酸の臭いのするものもあります。

ヘロインには神経を抑制する作用があり、乱用すると強い陶酔感を覚えることから、乱用を繰り返し強い精神的依存が形成され、大量に摂取すると、呼吸困難、昏睡の後、死に至ります。
ヘロインは心身への影響が非常に強いことから、医学的な使用も一切禁止されている大変危険な薬物です。

あへん(阿片)

あへんは、けしから採取した液汁を凝固させたもので、黒褐色で特殊な臭気と苦みがあり、「あへん法」により規制されています。
あへんの乱用は、精神的、身体的依存性を生じやすく、常用するようになると慢性中毒症状を起こし、脱力感、倦怠感を感じるようになり、やがては精神錯乱を伴う衰弱状態に至ります。

MDMA・MDA(隠語:エクスタシー、エックス、罰、バツ、タマなど)

MDMA・MDAは、覚醒剤と似た化学構造を有する薬物で、化学的に合成された麻薬の一種です。
俗に「エクスタシー」とも呼ばれ、本来は白色結晶性の粉末ですが、多くは様々な着色がされ、文字や刻印の入った錠剤の形で密売されています。
薬理作用は、視覚、聴覚を変化させる作用があり、幸福な気分になったり、他人に対する親近感が増したりするといわれていますが、その反面、不安や不眠などに悩まされる場合もあります。
また、強い精神的依存性があり、乱用を続けると錯乱状態に陥ることがあるほか、腎・肝障害や記憶障害などの症状も現れることがあります。

LSD(隠語:ペーパー、紙、神、アシッドなど)

LSDは、合成麻薬の一種で規制の対象とされ、水溶液をしみこませた紙片、錠剤、カプセルなどがあり、経口又は飲み物とともに飲むなどして乱用されています。
LSDを乱用すると、幻覚、幻聴などの強烈な幻覚作用が現れます。特に、幻視作用が強く、ほんのわずかな量だけで、物の形が変形、巨大化して見えたり、色とりどりの光が見えたりする状態が8~12時間続きます。
また、乱用を続けると、長期にわたって精神分裂などの精神障害を来すこともあります。

解離性麻酔薬「ケタミン」(隠語:K、スペシャルKなど)

ケタミンは、麻酔・鎮静作用を有し、幻覚作用もあります。
人を対象とした医薬品として販売され、現在では動物用医薬品として用いられているものですが、平成19年1月に麻薬として指定されました。
国内では主に粉末状のものが密売されていますが、押収されたMDMA等の錠剤型麻薬にケタミンが混合されている事例もあります。
ケタミン乱用によるものと考えられる死亡事例が発生しているほか、アジア、欧州、北米の多くの国において乱用が報告され、深刻な問題となっています。

PCPフェンサイクリジン 幻覚剤「エンジェルダスト」(隠語:Angel Dust, Super Grass, Rocket Fuel)

PCPは、幻覚剤として知られている薬物の1つです。また、覚醒剤、麻酔薬、または鎮痛剤としても機能します。

粉末として、鼻から吸い込み、液体にして静脈注射、錠剤またはカプセルとして飲み込まれます。

すべての幻覚剤と同様に、PCPは心と感覚に影響を与え、実際には存在しないものを見たり聞いたりする幻覚症状が現れます。それは喜びを感じる人もいれば、不安やパニックしか感じない人もいます。
時々、このパニックは暴力的な行動につながる可能性があります。

最後に使用されてから数日、数週間、または数か月後にフラッシュバックを引き起こす可能性があります。
大量に服用すると、けいれん、昏睡、および死を引き起こす可能性があります。
アルコールや他の薬と混合すると少量でも昏睡状態につながる可能性があります。

危険ドラッグ・脱法ハーブ(隠語:「K2」「スパイス」)

「合法ハーブ」「合法アロマ」などと称して販売。麻薬や覚醒剤などと類似した成分が含まれている。

乾燥させた植物繊維に各種の合成麻薬類を含侵・乾燥させたもの。

乱用により呼吸困難や異常行動を起こしたり、死亡した例がある。

向精神薬類 抗うつ薬、抗精神病薬(統合失調症)、抗不安薬、睡眠薬など

主に精神科で使用  * 日本では一般診療科でもベンゾジアゼピン系が頻繁に使われている。

ベンゾジアゼピン(商品名「デパス」)は、耐性、精神依存性が特に強いと言われる。

都内の某クリニックにて撮影

薬物依存症とは

定義

脳に直接作用して高揚感等をもたらす薬物に依存してしまう精神疾患

薬物依存とは薬物の摂取で快感や高揚感を伴う刺激を体験した者が、それを再び求める抑えがたい欲求が生まれて、その刺激がないと不快な精神的・身体的症状を生じる状態のことをいいます。 

「薬物依存症」は覚醒剤や大麻などの違法な薬物だけでなく、処方薬や市販薬、過度の飲酒でも起こります。

薬物依存症は、「精神医学的障害」です。決して意志が弱いからでも反省が足りないからでもありません。

説教や叱責、あるいは罰を与えても、解決できません。 解決に必要なことは専門治療です。


薬物依存とドーパミンの関係

アルコールや薬物などの依存対象物質を摂取すると、私たちの脳内にはドーパミンという快楽物質が分泌されます。
この快楽物質が脳内に放出されると、中枢神経系が興奮し、それが「快感・喜び」につながります。

この感覚を脳が報酬(ごほうび)というふうに認識すると、その報酬(ごほうび)を求める回路が脳内にできあがります。

国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部
「薬物依存症に対する認知行動療法プログラムの開発と効果に関する研究」

薬物依存に至るプロセス

家族からみた薬物依存症者の行動

薬物依存症者の行動  経験した家族の割合
感情の起伏が激しく、人が変わったようになった 93%
薬物を買うために嘘をついた 84%
薬物について尋ねると不機嫌になった 81%
意味不明な話をしたり行動がまとまらないことがあった  78%
薬物使用の道具が出てきた 76%
家の中で薬物を使用した 76%
薬物使用を見つかって開き直ったことがある 69%
薬物を使って大声を出したり暴れたりした 68%
薬物が原因で仕事を解雇された 68%
薬物が原因で身体的問題が起き、受診した 67%
本人が作った借金の督促が来たことがある 67%
薬物を使って暴力を振るうことがあった 61%
薬物使用のために補導・逮捕されたことがある 61%
薬物依存症、薬物中毒、中毒性精神病の診断を受けた 58%
薬物使用をやめるための入院をした 52%
菊池安希子、和田清「物質依存症の当事者家族への対応—茨城ダルク家族会の活動を中心に—」
精神科治療学、19(12);1419-1426、2004より改変